「今年はスギ花粉症が酷かった」
今年は、スギ花粉の飛散量が例年より多く、このため花粉症の症状が酷くて辛い人が多かった。スギ花粉の飛散はピークを過ぎましたが、今はヒノキの花粉の飛散のピークです。
この時期、花粉症の人とそうでない人がいます。花粉症では、スギ花粉に反応する人、ヒノキ花粉に反応する人、あるいは春よりも秋の花粉に反応する人、とさまざまですが、スギ花粉の花粉症の人が大半ではないでしょうか。
何故花粉症になるのでしょうか?
「何故花粉症になるのか?」
花粉症はIgEという抗体が体の中に作られ、再び抗原と反応すると生じます。
花粉症の人は、抗原(花粉)が飛散するとIgE抗体を作ります。作られたIgE抗体は、その受容体を発現したマスト細胞の表面に結合します(準備状態)。再び同じ抗原(花粉)が飛散し、マスト細胞上のIgE抗体に結合すると、マスト細胞の顆粒成分が細胞外に放出されます。顆粒成分にはヒスタミンなどがあり、くしゃみ、涙、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状が引き起こされます。
IgE抗体ができない人・出来にくい人は花粉症になりません。
何故、IgE抗体を作る人と作らない人に分かれるのでしょうか。
ジフテリア・破傷風・百日咳の3種混合ワクチンを皮下接種すると、IgG抗体が作られます。人には5種類の抗体IgG、 IgM、 IgA、IgD、 IgEがあり、それぞれが役割を担っています。ポリオやインフルエンザなどの防御を担うのはIgA抗体です。IgEは寄生虫の防御に働く抗体でしたが、今では花粉症などのアレルギー反応を誘導する抗体となっています。
花粉症患者はTリンパ球の1種である、2型ヘルパーT(Th2)細胞の働きが、活発なためにIgE抗体が多く作られます。アレルギー体質というのはTh2細胞の働きが強い人ということができます。1型ヘルパーT (Th1) 細胞という細胞もあり、Th1とTh2のバランスが取れていればIgE抗体の産生が少なくなり、花粉症になりにくいといえます。また、Th2細胞の働きを抑制すればIgE抗体ができにくくなります。
「スギ花粉症かヒノキ花粉症か?」
抗体は抗原に対して特異性があります。抗原と抗体は「鍵と鍵穴」の関係であり、スギとヒノキでは鍵の構造が異なるためにスギ花粉に特異的なIgE抗体はヒノキ花粉と反応しません。逆にヒノキ花粉に特異的なIgE抗体はスギ花粉と反応しません。両方に反応する人はスギ花粉に特異的なIgE抗体とヒノキ花粉に特異的なIgE抗体の2種類が存在するためです。
花粉症の原因となる主な植物の開花時期は、スギが2月上旬から4月上旬まで、ヒノキが2月上旬から5月上旬まで、ハンノキは3月下旬から4月上旬まで、ブタクサは8月中旬から10月中旬まで、ヨモギは9月中です。
「今まで花粉症で無かったのに突然花粉症になった。」という人がいます。これは「アレルギーの症状を引き起こすのに十分なIgE抗体が作られるようになった」ということです。体質の変化もありますし、都市の排気ガスの多い地区で過ごすことで、排気ガス中の微粒子に結合した花粉を吸入してIgE抗体が作られ易くなったという場合もあります。
「花粉症対策」
花粉症は2段階で起ります。第1段階はIgE抗体ができ、マスト細胞上の受容体に結合する段階です。第2段階は再び抗原(花粉)が飛散しIgE抗体と結合し、マスト細胞内の顆粒が放出され、アレルギー反応を誘導する段階です。
花粉症対策は、1)花粉の侵入を防ぐ(抗原量を少なくする)、2)IgE抗体産生を抑制する、3)顆粒の放出を抑制する、4)アレルギー物質の作用を抑制(拮抗)する、という4通りの対策があります。
抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬は3)と4)に働きかける薬物です。健康食品の殆どが2)の「IgE抗体の産生を抑制する(体質を改善する)」に働きかけるものです。発酵ぶどう食品(FGF)はIgE抗体産生を抑制するだけでなく、第2段階に作用する健康食品です。花粉症患者がFGFを服用すると症状が軽減されるのはこのためだと考えられます。詳しい機序はこれから研究する必要があります。
FGFの抗アレルギー作用は“Immunopharmacology and Immunotoxicology(免疫薬理学と免疫毒性学)”という科学雑誌に発表されています(英文ですがPDFを“新着情報”で利用できます)。
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